1. 概要
令和6年度介護報酬改定において、利用者の人権擁護と虐待防止を推進するため、「高齢者虐待防止措置未実施減算」の新設および「身体拘束廃止未実施減算」の拡大が行われました。令和7年4月より一部サービスにおいて身体拘束廃止未実施減算の経過措置期間が終了します。
2. 減算制度の要点
2.1 身体拘束廃止未実施減算
- 重要ポイント: 利用者に対して身体的拘束等を実施していない場合でも、適正化のための全ての措置(委員会開催、指針整備、研修実施)がなされていなければ減算の対象となります。
- 減算額: 基本報酬から5単位/日
- 運営指導等で不適切な事案が発見された場合、過去に遡って減算されるのではなく、発見月から適用されます。
2.2 高齢者虐待防止措置未実施減算
- 研修実施頻度の要件:
- 年2回以上: 施設系・居住系サービス(特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設等)
- 年1回以上: 訪問系・通所系サービス(訪問介護、通所介護、短期入所等)
3. 身体拘束の定義と緊急時の3要件
身体拘束とは「正当な理由なく障害者・高齢者の身体を拘束すること」で、身体的虐待に該当します。
3.1 身体拘束の具体例
- 車いすやベッドに縛り付ける
- ミトン型手袋で手指の機能を制限する
- 介護衣(つなぎ服)で行動を制限する
- 向精神薬の過剰投与による行動制限
- 居室等への隔離
3.2 緊急やむを得ない場合の3要件
全ての要件を満たす必要があり、記録が確認できない場合は減算対象となります
- 切迫性: 利用者本人または他の利用者等の生命・身体・権利が危険にさらされる可能性が著しく高い
- 非代替性: 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がない
- 一時性: 身体拘束その他の行動制限が一時的である
4. 適正化のための体制整備
4.1 必要な措置
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記録の実施
- 身体拘束等を行う場合の態様・時間・心身状況・理由の記録
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委員会の開催
- 身体拘束適正化委員会の定期的開催(少なくとも年1回以上)
- 虐待防止委員会と一体的な設置・運営も可能
-
指針の整備
- 事業所における身体拘束等の適正化に関する基本的な考え方
- 委員会の設置や研修に関する基本方針
- 発生時の対応方針など
-
研修の実施
- 定期的な研修の実施(年1回以上)
- 新規採用時の必須研修
4.2 虐待防止委員会と身体拘束適正化委員会
構成:
- 委員長: 管理者
- 委員: 虐待防止責任者(サービス管理責任者等)、看護師、事務長など
- 第三者: 利用者や家族の代表者、苦情解決第三者委員など
主な役割:
- 研修計画の策定
- 職員のストレスマネジメント
- 苦情解決
- 事例の集計・分析と防止策の検討
- 身体拘束に関する適正化の検討
5. 小規模事業所のための効果的な取り組み
-
記録様式の活用
- 既存の公表資料や他施設の雛形を活用
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委員会運営の工夫
- 法人単位での委員会設置
- 虐待防止委員会と一体的な運営
- 既存会議体と併せた開催
- オンライン会議の活用
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研修実施の工夫
- 行政機関や基幹相談支援センターの研修機会活用
- 大規模事業所との合同研修
- 録画や伝達研修の実施
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指針整備の効率化
- 公表資料を基にした指針作成
6. 対策提案
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チェックリスト定期実施
- 四半期ごとに身体拘束適正化と虐待防止のチェックリストを実施
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記録システムの強化
- 身体拘束実施時の記録テンプレートをデジタル化
- 三要件(切迫性・非代替性・一時性)の確認プロセスを組み込む
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研修計画の体系化
- 年間研修計画に虐待防止と身体拘束廃止の研修を明確に位置づけ
- 職種別・経験年数別の研修内容カスタマイズ
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事例検討会の定期開催
- ヒヤリハット事例や身体拘束が検討された事例の定期的な振り返り
- 代替ケア方法のライブラリ構築
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第三者評価の活用
- 定期的な外部評価の受審
- 利用者・家族からのフィードバック収集システム構築
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多職種連携の強化
- 医師・看護師・介護士・相談員等による定期カンファレンス
- 困難事例への多角的アプローチ検討
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ICT活用による情報共有
- 委員会議事録や研修資料のデジタル共有
- 事例データベース構築と分析
これらの対策を計画的に実施することで、利用者の人権尊重と適切なケア提供の両立が可能となります。
7. 会議内容
実施日時: 2025年4月11日
場所: リハビリ特化型デイサービスリメイク 機能訓練室
内容: 高齢者虐待防止及び身体拘束適正化に関する定期会議(半年に1回実施)
会議内容
1. 高齢者虐待防止について
- 「高齢者虐待防止のための指針」のパンフレットを用いて以下の内容を確認した:
- 高齢者虐待の定義
- 虐待行為は虐待者・被虐待者の自覚の有無を問わないこと
- 具体的な虐待の例
- 虐待を発見した場合の通報義務
2. 身体拘束適正化について
- 「身体拘束適正化のための指針」を用いて、身体拘束適正化のための7つの指針を確認した
- 身体拘束は原則として行わないことを再確認
- やむを得ず身体拘束を行う場合の3要件について学習:
- 切迫性:利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
- 非代替性:身体拘束以外に代替する介護方法がない
- 一時性:身体拘束は一時的なものである
3. 通報・届出体制の確認
- 事業所内に掲示されている相談・通報・届出先の確認
- 通報・届出の具体的な手順の確認
4. 虐待防止チェックリストの実施
- 全従業者に対して「虐待防止チェックリスト」を実施
職員からの意見・気づき
- 言葉でのコミュニケーションが難しい利用者については、表情等を注意深く観察することの重要性が共有された
- 利用者への呼称については、本人や家族と相談しながら適切な対応を心がけていることが確認された
- 通報・届出の手順が明確になり理解が深まった
- 身体拘束はあくまで緊急事態における一時的な手段であることを再認識した
今後の取り組み
- 引き続き利用者の尊厳を守る介護を実践する
- 職員間のコミュニケーションを密にし、気になる点は速やかに共有する
- 定期的な研修・会議を継続し、高齢者虐待防止と身体拘束適正化への意識を高める
- 法律的な解釈が必要な場面では顧問弁護士に相談する
- 次回会議は2025年10月頃に実施予定
本報告書は、施設内での高齢者虐待防止及び身体拘束適正化の取り組みの記録として保管するとともに、全職員への周知徹底を図るものとする。
報告書作成日: 2025年4月13日

8. 参考資料
https://www.mhlw.go.jp/content/001141646.pdf
https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2025/0121100941183/ksvol.1345.pdf